札幌地方裁判所 昭和46年(ワ)3142号 判決
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〔判決理由〕1 証人宮田和男の証言によれば、被告札幌出張所において、昭和四五年六月ころ、訴外夏堀エツ子およびその内縁の夫と称する訴外岡垣昭弘の申し込みにより右夏堀に対しフォードの中古車を販売したこと、ところが同年一一月になつて、右岡垣から、同車に買受当時からオイル洩れがあつたとして無償修理を要求され、その故障原因について異論があつたものの結局原因の究明もかね修理することとし同年一二月一一日同車の引渡しを受けたこと、その際同人から代車を貸与されたい旨の要求を受け、一旦はこれを断つたのであるが、同月一七日、重ねて代車の貸与方を強硬、執拗に要求され、拒み切れず同人に加害車を無償貸与するに至つたこと、右貸与期間はせいぜい右フォードの修理期間に止まるものであつたこと、被告札幌出張所においては、右貸与の際の右岡垣の言辞から、加害車の運転に当る者は同人および前記夏堀であると理解し、右両名以外の第三者が同車を運転することを全く予期していなかつたこと、しかるに右岡垣は被告不知の間に加害車を訴外田倉に貸与し、右田倉は自己の私用を果すためこれを運転中本件事故を惹起させたものであること、被告は本件事故を覚知するまで右田倉とは面識もなく、従つて同人との間に雇傭その他の身分関係がなかつたことが認められる。右認定を左右するに足りる証拠はない。
また、訴外岡崎、同夏堀と訴外田倉間に雇傭その他密接な身分関係があると認めるべき何らの証拠もなく、弁論の全趣旨によれば、右両者間の関係はせいぜい知人関係であると推認できる。
2 以上認定によれば、被告において、訴外岡垣、同夏堀以外の第三者に加害車の運転を許容したとか、訴外田倉においてこれを運転すべきことを知りまたは知ることができる事情があつたと認めることはできない。
3 思うに、自賠法三条の、自動車の運行供用者責任の成否は、いわゆる危険責任、報償責任の思想に立脚する運行支配、運行利益なかんずく運行支配の存否にかかると解されるところ、本件事故の発生原因となつた訴外田倉のした加害者の運転に関しては、以上認定の諸事情にもとづけば、被告に危険責任報償責任を問いうる契機を見出し難く、すなわちその運行支配、運行利益がなお存すると認めることはできない。結局、右運転に関しては、被告をもつて自賠法三条の運行供用者に当るとしえない。(藤原昇治)